キャプテン
ユーモアものがたり

ポテンコ先生 2

   


 さて,きょうの四時間めは,体いくだ。
 ユリは,うれしそうに運動場にならんだ。
 (ドッジ・ボールかな。それともソフトボールかな。)
 なにをやっても,ユリはクラスで一ばんうまい。男の子よりおてんばでハッスルやだから。
 先生が,大声でどなった。
 「ようし,じゅんび体そうがおわったら,かけ足だ!」
 「ヒェーッ,か,かけ足……。」
 かけ足だけは,にがてだ。
 「お,ユリ,うれしそうだな。」
 先生がにっこりした。じょうだんじゃないよ,かけ足なんて。
 みんなフウフウいいながら走りだした。ユリはたちまち,一ばんびりだ。ドテドテドテ…。
 「こらあ,だらしがないぞ!」
 先生がすぐあとからくる。
 ピシャン! 先生は,ユリのせなかをたたいた。
 「いてっ。」
 ユリは女の子らしくない声をあげた。
 もう,ふらふらだようっ。
 「ようし,かけ足やめ! つぎは,てつぼうでさかあがり。」
 うへっ,てつぼうもにがてだ。
 「先生,少し休んでから。」
 ユリがいうと,先生はぎょろりとにらんだ。
 「このくらいでへたばって,どうする。先生は,みんなのからだが,じょうぶになるように考えているんだぞ。」
 「はあい。」
 「では,じゅんびはじめ!」
 ユリのばんがきた。
 「こら,どうした。」
 ユリは,いくらやってもできない。
 「おもいきって,ぐっとあがれ。」
 「おしりがじゃまなんです。先生,ちょっとあずかってください。」
 「おお,そうか,よし……えっ,そんなことができるか。」
 そのとき,ジリジリとベルがなった。
 「ようし,おわりだ。みんな手をあらって,きゅう食だ。」
 ユリのきらいなにんじんが,たくさんあった。
 ユリは,みんなのこした。
 「どうしたんだ,ユリ。」
 「大すきなにんじんを,さいごにたべようとして,とっておいたら,おなかがいっぱいになって,たべられません。」
 「にんじんをたべないと,からだがポテンコになるぞ。もったいないから先生がたべる。」
 先生は,ユリののこしたにんじんをぺろり。
 「先生,ぼくのも。」
 「わたしのもたべて。」
 みんな,いっせいに先生のつくえの上に,にんじんをもりあげた。
 「しょうがないなあ。」
 先生は,おこったようなかおをして,もりもりたべはじめた。
 つくえの上には,あとからあとからにんじんがふえる。
 「ひいっ。まだあるのか。」
 「でも,先生はにんじんがすきなんでしょ。」
 ユリがいうと,
 「それはそうだが……。うわあ,まだあるのか。たすけてくれえ!」
 とうとう先生は,教だんの上でひっくりかえってしまった。
 「ウーン,おなかがいたい。」
 「たいへんだ。先生がびょう気になった。」
 「パトカーをよぼう。」
 「ちがう,しょうぼう自動車だ。」
 「いや,きゅうきゅう車よ。」
 「ダンプカーにしたら。」
 教しつじゅうは,大さわぎ。
 「みんなで,びょういんまではこんで行きましょうよ。」
 「そうだ,かつぎあげろ。」
 エンヤコーラ,ドッコイショ。ぜんいんが,先生をもちあげてエッサエッサと,ろうかを歩いていった。
 「ねえ,みんな。元気よく歌をうたって行こうよ。」
 ユリがうたいはじめた。
  ばらがさいた
  ばらがさいた……
 みんな,おみこしをかついでいるつもりで,先生のびょう気のことなんかわすれてしまった
 「おい,おろしてくれ,もう,なおった,なおった。」
 びょう気のほうで,びっくりしてなおっちゃったらしいね。
 おろされたとたんに,先生がどなった。
 「こら,にんじんをのこすようなよわむしはきらいだぞ。」
 (小三・6月号につづく)

 ポテンコ先生とユリたちのゆかいなものがたりを6月号でも読もうね。



 最後から5行目に「。」が付いていません。これは原文通りですので自分の間違いではありません。(^^;(2014.5.26 Oz)

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