さて,きょうの四時間めは,体いくだ。
ユリは,うれしそうに運動場にならんだ。
(ドッジ・ボールかな。それともソフトボールかな。)
なにをやっても,ユリはクラスで一ばんうまい。男の子よりおてんばでハッスルやだから。
先生が,大声でどなった。
「ようし,じゅんび体そうがおわったら,かけ足だ!」
「ヒェーッ,か,かけ足……。」
かけ足だけは,にがてだ。
「お,ユリ,うれしそうだな。」
先生がにっこりした。じょうだんじゃないよ,かけ足なんて。
みんなフウフウいいながら走りだした。ユリはたちまち,一ばんびりだ。ドテドテドテ…。
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「こらあ,だらしがないぞ!」
先生がすぐあとからくる。
ピシャン! 先生は,ユリのせなかをたたいた。
「いてっ。」
ユリは女の子らしくない声をあげた。
もう,ふらふらだようっ。
「ようし,かけ足やめ! つぎは,てつぼうでさかあがり。」
うへっ,てつぼうもにがてだ。
「先生,少し休んでから。」
ユリがいうと,先生はぎょろりとにらんだ。
「このくらいでへたばって,どうする。先生は,みんなのからだが,じょうぶになるように考えているんだぞ。」
「はあい。」
「では,じゅんびはじめ!」
ユリのばんがきた。
「こら,どうした。」
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ユリは,いくらやってもできない。
「おもいきって,ぐっとあがれ。」
「おしりがじゃまなんです。先生,ちょっとあずかってください。」
「おお,そうか,よし……えっ,そんなことができるか。」
そのとき,ジリジリとベルがなった。
「ようし,おわりだ。みんな手をあらって,きゅう食だ。」
ユリのきらいなにんじんが,たくさんあった。
ユリは,みんなのこした。
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「どうしたんだ,ユリ。」
「大すきなにんじんを,さいごにたべようとして,とっておいたら,おなかがいっぱいになって,たべられません。」
「にんじんをたべないと,からだがポテンコになるぞ。もったいないから先生がたべる。」
先生は,ユリののこしたにんじんをぺろり。
「先生,ぼくのも。」
「わたしのもたべて。」
みんな,いっせいに先生のつくえの上に,にんじんをもりあげた。
「しょうがないなあ。」
先生は,おこったようなかおをして,もりもりたべはじめた。
つくえの上には,あとからあとからにんじんがふえる。
「ひいっ。まだあるのか。」
「でも,先生はにんじんがすきなんでしょ。」
ユリがいうと,
「それはそうだが……。うわあ,まだあるのか。たすけてくれえ!」
とうとう先生は,教だんの上でひっくりかえってしまった。
「ウーン,おなかがいたい。」
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「たいへんだ。先生がびょう気になった。」
「パトカーをよぼう。」
「ちがう,しょうぼう自動車だ。」
「いや,きゅうきゅう車よ。」
「ダンプカーにしたら。」
教しつじゅうは,大さわぎ。
「みんなで,びょういんまではこんで行きましょうよ。」
「そうだ,かつぎあげろ。」
エンヤコーラ,ドッコイショ。ぜんいんが,先生をもちあげてエッサエッサと,ろうかを歩いていった。
「ねえ,みんな。元気よく歌をうたって行こうよ。」
ユリがうたいはじめた。
ばらがさいた
ばらがさいた……
みんな,おみこしをかついでいるつもりで,先生のびょう気のことなんかわすれてしまった
「おい,おろしてくれ,もう,なおった,なおった。」
びょう気のほうで,びっくりしてなおっちゃったらしいね。
おろされたとたんに,先生がどなった。
「こら,にんじんをのこすようなよわむしはきらいだぞ。」
(小三・6月号につづく)ポテンコ先生とユリたちのゆかいなものがたりを6月号でも読もうね。
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最後から5行目に「。」が付いていません。これは原文通りですので自分の間違いではありません。(^^;(2014.5.26 Oz)