キャプテン
ユーモアものがたり

ポテンコ先生 5

竹淳・文 千葉あきお・え


 夏休みのとう校日――。
 星先生が,みんなを見まわしていった。
 「おっ,みんな日にやけたな。一郎も三平も,ユリもドタ子も黒くなってきたな。おや,よしえはいやに白いじゃないか。どうした。」
 「だってあまり黒くなると,およめさんにいかれないもん。」
 「ばかもん,ポテンコめ。子どものうちは色が黒いほうがけんこうでいいんだ。大きくなっても,もやしみたいにひょろひょろじゃ,およめにいけないぞ。」
 「はあい。」
 「ところで,休みちゅう,なにかおもしろいことがなかったか。」
 するとユリがさっと立っていった。
 「先生,町はずれのゆうれいやしきの話,知っていますか。」
 「なに,ゆうれいやしき?それはおもしろい。行ってみたことあるのか。」
 「ありません。よかったらみんなで行きませんか。」
 一郎たちも口ぐちにいった。
 「行こう行こう。きょう行こうよ,先生。」
 星先生は,ぎょっとなったように,
 「いや,いつか行けばいい,ゆうれいなんてつまらん。」
 「ウヒャヒャ。先生,こわいんでしょ。」
 ユリがいうと,先生は,
 「こわくなんかないぞ。よし,それなら,きょう行こう!」
 ゆうれいやしきって,こわれかけた,きみのわるい家だと思ったら,すごくりっぱな家だ。
 「なんだ,ゆうれいなんかいそうもないじゃないか。」
 「まあ,すてきなおへやね。こん夜はここにとまらない?」
 ユリのことばに,みんな大さんせい。
 「早く夜にならないかな。」
 「うん,どんなゆうれいが出るか,楽しみだね。」
 夜になった。
 きゅうにドロンドロンと音がしたかと思うと,
 「ウヒヒヒ,おばけ〜〜。」
 と,きみわるい声がきこえた。
 「ヒェーッ!」
 星先生は,すみっこで頭をかかえてふるえている。
 「ゆうれいさん,出ておいで。」
 ユリたちは,楽しくなって,ゆうれいをよんだ。
 「あかりがついてちゃ,はずかしいよう〜〜。」
 ゆうれいがこたえた。
 ゆうれいに にげられてはつまらない。ユリたちはあかりをけした。
 「けしたから,いらっしゃい。」
 ゆうれいはおどろいた。
 (ようし,うんとこわい顔をしていこう。)
 こわい顔したって,くらいからわからないのに,まぬけなゆうれいだ。ドロローン。パッ!
 「キャホー,ゆうれいが出た。プロレスごっこしようぜ。」
 「あら,まりつきにしましょうよ。」
 ユリと一郎が,ゆうれいを引っぱりあったからたまらない。
 「いてて,たすけてくれえ。あんまり手を引っぱるない。」
 ゆうれいはなき声だ。
 「だってあんた足がないんだから,手しか引っぱれないわ」
 「ふうん,それもそうだ。」
 どうも,あまりゆうれいとしてはかっこよくない。
 「わしは,ゆうれいなんだぞう。」
 「わかってるよ。もんくいわずにプロレスしよう。それえ。」
 ドテーン,バタン,エイヤッ キュッ!
 一郎のとびげりにやられたゆうれいは,星先生にぶつかった。
 「ギャッ,こわい!」
 先生は,びっくりぎょうてん。そのまま目をまわしてのびてしまった。
 ゆうれいもフウフウいってる。
 「ち,ちきしょう。ゆうれいだと思ってばかにするな!」
 「ばかになんかしてないわよ。あんた,もうなれたでしょ。あかりをつけても,はずかしくないわね。」
 ユリは,そういって電とうのスイッチをひねった。
 とたんに,一郎が,
 「ワーッ,こわい顔!たすけてくれえ。」
と,あわててにげだした。ユリもみんなも,こわくなった。
 「たすけてチョーダイ。」
 みんなでかけだした。
 ゆうれいはぽかんとして,たおれている星先生のところへ行った。
 「もしもし,かぜを引きますよ」
 先生はやっと気がついた。
 「やあ,どうもどうも。」
と,ゆうれいの顔を見て,
 「ギャオーッ,こわい!」
 ゆうれいも,先生の顔を見て,
 「わっ,すごいひげづら!こわいよう。」
 りょうほうとも,また目をまわしてドタン。まったく,しようがないね。(小三・9月号につづく)

 [9月号は,もっとゆかいなお話ですよ。楽しみにね。]



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