竹淳・文 千葉あきお・え
「ポテンコめ!」と,しかるのが口ぐせのポテンコ先生と,ユリたちのたのしい物語です。
きょうは,運動会だ。
パンくいきょう走や,自転車きょう走もある。一ばん人気があるのは,やっぱり,ときょう走だ。
星先生が,クラス全いんを集めていった。
「みんながんばるんだぞ。きょうは,わがクラスの力を,学校全ぶに知らせるんだ。さあ,思いっきりがんばろう!」
「オーッ!」
「オ〜〜。」
「なんだ、ユリ,元気がないな。」
「おなかがすいちゃったの。」
「パンくいきょう走でがんばれ。」
「うん,もりもりくってやる!」
「くってやる? ユリ,おまえは女だろ。ことばに気をつけなさい。ポテンコめ。」
「はい,女らしくします。」
パンくいきょう走がはじまった。ようい,ドン!
「あれ,ユリはどうかしたのかな。」
一郎がさけんだ。
みんなのあとから,ユリがちょぼちょぼ走っている。
「ユリ,びりになるぞ!」
みんながはらはらしているのに,ユリはへい気だ。
やっとパンのところへついた。
ところが,せがひくいので,パンにとどかない。みんなムシャムシャたべているのに――。
星先生がそばへ来てどなった。
「ユリ,とびあがれ!」
「あら,先生,とびあがるなんて女らしくないですわ。」
「女も男もないぞ。早くしろ。おなかがすいているんだろ。」
「そういえば,そうね。くわなきゃそんだ。」
ユリはとびあがってパクッ!
「イテーッ,したもいっしょにかんじゃったあ。」
ユリは,すごいスピードで走り出した。
ゴールへついたとたんに,ばったり。
「ヒイッ,パンがのどにつま,つま,つま……。」
先生が,とんできた。
「オホッ,ユリ,一とうだぞ。」
つぎは,先生たちの,自転車おそのりきょう走だ。できるだけおそく走ったものが勝ち。
星先生は大はりきり。
「いつも失ぱいばかりしているから,きょうこそクラスのものに,かっこいいところを見せるぞ。」
ようい,ドン!
「ポテンコ先生,がんばれえ。」
クラス全いんがおうえんだ。
先生は,とくいになってすいすい走る。
「先生! 走っちゃだめだい。びりになるんだよう!」
「ありゃ,そうか。やっぱり,ぼくは,かっこわるいやくしかできないのか。」
先生はぴたっととまった。
「おっと,たおれる。しっかりしてよう!」
ユリは,けんめいにさけんだ。
のろのろ,のろのろ。
ほかの先生がおいついてきた。
「星先生,お先にどうぞ。」
「いや,みなさん,お先に。」
ぶつかってたおれる人もいる。
「イヒヒ,どうやらびりだ。」
ユリたちは,よろこんだ。
「いいぞ,いいぞ。びりだ,びりだ。ビリ,ビリ,ビリになあれ。」
先生はげんなりした。
「へんなおうえんのしかただ。こまっちゃうなあ…と。」
先生のおくさんの声がした。
「あなたあ,びりになってねえ。」
「ゲッ,見にきてるのか。」
星先生は,まっかになって,よろよろステーン。
「あああ,がっかり。もう少しだったのに……。」
ユリたちは,しょんぼり。
「やあ,すまんすまん。このつぎのときょう走でがんばるよ。」
「生とのかけっこに,先生は出られないわ。」
「なに,かまわん。とくべつ出えんだ。」
ユリたちは,スタートラインにならんだ。
見物人は,ワイワイガヤガヤ。
「やあ,ばかに大きい生とがいるなあ。」
「うん,ひげもはえている。ずいぶんらくだいしたらしい。」
スタート!
星先生はトップだ。あたりまえだよね。ところが,あまりいい気になって走ったので,まがりかどでドターン。
そこへ,あとからきたユリたちがドサッ! パサッ! つづけて先生の上へのっかった。
「ワーン,だからだめだといったのにっ。」
みんなゲラゲラ……。
ついに全いんびりになった。
(小三・11月号へつづく)ユリちゃんは歌が大すきだ。11月号では,ユリちゃんと「ちびっ子歌まつり」でうたおう。
ますますおもしろい「ポテンコ先生」!11月号もゆかいなお話ですよ。