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『アニメ制作も努力とチームワークなんです』 鷺巣政安
『キャプテン』にも通じるチームワークの大切さ
『キャプテン』が世代を越えて読み継がれた理由はいくつもあるでしょう。魅力的な登場人物たち、スポーツに打ちこむひたむきさ、努力と友情を大事にする物語、情感あふれる描写……。でも、それだけではないような気がします。 アニメというのは大勢のスタッフが関わる総合芸術です。個人の作業がスムーズに連関してはじめていい作品ができるんです。最初に出崎哲さんに監督をお願いしたとき、彼から言われたのは、とにかくチームワークを大事にしたい、と。出崎さん率いる「マジックバス」と私たち「エイケン」の共同作業でいこう、ということでしたね。それはまるで『キャプテン』で谷口をはじめとする歴代のキャプテンたちが苦心したチーム作りのようでしたよ。
スタッフががんばるほどアニメは面白くなる
『鉄腕アトム』や『鉄人28号』の時代はともかく、『キャプテン』のころまでにアニメは制作会社の下に多くのプロダクションが参加して作るものになっていました。ひとつのプロダクションが同時期にいくつもの作品に関わり、同じ専門学校からスタッフを集める。
結果的に、作品も会社もちがうのに作画スタッフはまったく一緒というアニメができあがるんですが、それでもエイケンが作るとエイケンらしい作品になり、監督の個性がきちんと画面に現れるのはなぜか、ということなんです。
それは監督というキャプテンが、いかにしてスタッフをまとめあげ、自分のめざす方向(目的)へ誘導できるかによります。それにはやっぱりチームワークなんですよ。
『キャプテン』という原作の力と、出崎監督の情熱が、谷口の「がんばり」のようにスタッフを引っ張ったわけです。こうしてできあがった2本のテレビスペシャルと劇場版は多くのファンを得ました。それはキャプテンに率いられたスタッフたちの努力とチームワークを、視聴者が画面から無意識のうちに感じ取っていたからではないかと思うんです。
たまたま機会を得ませんでしたが『プレイボール』までアニメ化したかったですね。でも、まだあきらめたわけじゃありませんよ(笑)。