キャプテン

野球マンガ誌に残るキャプテンの価値


 1947年の井上一雄『バット君』。ここから日本の野球マンガ(ストーリーもの)ははじまった。 56年、トキワ荘の一員・寺田ヒロオが野球を通して友情と努力を学んでいく様を描いた『背番号0』を発表。 これらの作品の登場にともない、少年雑誌の中で野球というジャンルは確立されていった。 しかし野球少年の日常を描いたこの路線は、『ちかいの魔球』『黒い秘密兵器』の登場で、魔球系へ移行していく。
 野球マンガは『巨人の星』で次なる転換を迎える。 この作品で”スポ根”路線は確立され、『男どアホウ甲子園』『アパッチ野球軍』などが続いた。 しかし、これも『侍ジャイアンツ』の主人公・番場蛮の壮絶な死と共に終焉。
 そして72年、野球マンガは一つのピークを迎える。『野球狂の詩』『キャプテン』『ドカベン』『アストロ球団』がスタート。 どの作品も現在につながるそれぞれのジャンルの走りというべき作品たちだ。野球マンガ自体が成熟期に入り、細分化がはじまったのだ。 なかでも特筆すべきが『キャプテン』の存在だ。 火花を散らすライバルも魔球も恋愛もなく、ストーリーの核となるキャプテンもヒーローではない。 しかし、この地味な話に読者は引き込まれ、涙してしまう。 同じ地味でもかつての『バット君』や『背番号0』とは異なる、まさにリアルな野球マンガといえる作品が登場したのだ。
 以降も野球マンガは熱狂を茶化した『すすめ!!パイレーツ』『がんばれ!!タブチくん!!』のようなギャグ系、 恋愛との2本立て『タッチ』、野球なのか?な『地獄甲子園』などが登場し、 より細分化されていくが、未だ『キャプテン』を超えるリアル系マンガは現れていない。

(キャプテン PERFECT BOOK 別冊宝島892)

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