―㊙作戦の章―
![]() | 発行日:2003年12月 1日 |
キャプテンの風景K担当編集者が語る制作秘話
担当はおいてけぼり ちばさんは、スポーツが好きだった。水泳、野球、スキー、ボーリング、ゴルフとなんでもこいで、すべてに上手かった。僕がつきあったのは、スキーとゴルフ。スキーは二度ほど行ったか。その一度目、アシスタントやお手伝いさんと一緒だった。
「谷口さん、スキーは初めて?」と、ちばさん。
「いや、去年会社の友人と…」
「じゃあ少しは滑れるのね。お手伝いさんに教えてやってよ」
しまった。経験があるなんていわなけりゃよかった。会社の友人というのがヒドイヤツで、スキー初めての人間を山のてっぺんに連れてきて、本人は滑り降りて、下の方から早く滑ってこいと叫ぶ。板を平行に合わせるとスルッと滑る。これはどうしたものか。このまま滑っていって人とぶつからないか。ゲレンデから人がいなくなるのを待つ。当然ながらリフトはグルグル回り、次から次へと人はたえない。
腰をおろしたまま小一時間どうしたものかと逡巡する。リフトで何度も回っているスキーヤーが「あの人あんな所に座って何してんだろう?」なんて目付きで、滑っていくように感じる。僕は焦る。焦るがおもむろにタバコに火を着け上手そうに吸う。味などない。―というアリサマだったのだ。
さて、ちばさんたちとのスキー当日。一度はヨロヨロと滑ったが、昨年の経験がトラウマになって恐怖感が先立ってスキーにならぬ。初めて滑るお手伝いさんの方が、僕なんかより上手く滑り、楽しそうに騒いでいる。僕は板をはずし、白樺の林に一人佇むが、誰も振り向いてくれない。仕方なくロッジに戻り、酒を飲む。ちばさんがヒョコッと顔を出し、「何、もう疲れたの? 歳だなァ。 俺、もうひと滑りしてくるよ」
畜生! 誰も俺を構ってくれない。スキーなんて金輪際やるものか!! と思って以来、その思いだけが現在も続いている。
(モウちゃん またひとつおせっかいやきにきたぞ…という一言が欲しかったのに…。)