キャプテン
月刊コミック特盛

プレイボール総集編 強豪への道編①

― 丸井初練習 ―


月刊コミック特盛2005年11月号

発行日:2005年11月 1日
出版社:ホーム社

作品タイトル 掲載誌(週刊少年ジャンプ) コミックス 愛蔵版 文庫版
第115話 丸井初練習の巻 1977年26号・27号(6月27日号・7月4日号) JC第19巻 愛蔵版第10巻 文庫版第10巻
第116話 墨谷の実力は!?の巻 1977年29号・30号・31号(7月18日号・25日号・8月1日号)
第117話 秋季大会予選始まる!の巻 1977年32号・33号(8月8日号・15日号) JC第20巻
第118話 いけいけ墨谷!の巻 1977年34号・35号(8月22日号・29日号)
第119話 さえる佐野の左腕の巻 1977年36号・37号(9月5日号・12日号)


アニメ大人気御礼スペシャル対談

出崎哲さん(アニメ「プレイボール」総監督)×谷口忠男さん(元・担当編集者)



―『プレイボール』の魅力はどんなところでしょうか?
出崎  『プレイボール』を読んでいて元気づけられたり、勇気づけられたりするのは、登場人物たちに弱さや欠点があるからじゃないかな。
谷口  谷口もキャプテンなんだけど優柔不断で、いざとならないとしゃべらないですしね。
出崎  そういう悩んだり、ためらったりするところに、見る人は親近感を覚えるんだと思います。カッコ悪い部分を隠さずさらけだすっていう観点が、とても大事に描かれている。最初にアニメ『キャプテン』を作った時、ちばあきお先生に「そういう所をアニメにも生かしたい」って話したら、すごく喜んでくれました。
谷口  丸井もシッカリしていながら、よく失敗するじゃないですか。それに対する周りの指摘の仕方とか、どう受け止めるかとか、細やかな感情が生き生きと描かれていますよね。
出崎  谷口にしても丸井にしても、ヒーロー的じゃないんですよね。普通の主人公だとカッコイイ部分しか見せなかったりするのに、ちゃんとカッコ悪いところも見せる。話としてはヒーロー的になる話なのに、それを感じさせない上手さがありますね。


―谷口を始めとする個性的なキャラクターは、どのように作られたのでしょう?
出崎  アニメ『キャプテン』の時には、当時はやっていた血液型占いを生かしました。イガラシをA型、近藤をB型、丸井をO型、谷口をO型、って最初に決めたんです。それから周りの人みんなに血液型を聞いて、その人を観察しクセを盗む。それをアニメのキャラに反映させていたんですよ。それで映像にした時に、原作にあるリアリティーを損なわずできたような気がします。
谷口  ちば先生も、とにかく周りをよく見る人で、友人たちの特徴をとらえてキャラクターに使っていました。それとよくやっていたのが、キャラの一覧表作りです。主人公たちはもちろん、マンガには全然出てこない八百屋のおじちゃんとか、近所のオバサンとかまで、どんな性格か細かく設定していました。
出崎  わりと几帳面なところがありましたよね。妥協を許さないというか。
谷口  とにかく細部にこだわる人でしたね。背景もほとんどトーンを使わず、丁寧に一線一線描いていましたし。目を入れる位置にひたすら悩んでいたり。
出崎  そういう細かい描写を積み重ねる方法が、リアリティーを生むんでしょうね。アニメも「細部にこだわる」というのは受け継いで作っています。たとえば谷口がひとりで悩んでいて、父ちゃんがその部屋に入ってくるシーンなんですけど。その時台所にいた母ちゃんが取り残されないように、ふすまを開けたままにしたんです。人と人とのつながりを大事に描きたかったんで、少しでもつながりが切れないように気をつけましたね。演出では面白がることが大切と思っているので、楽しんでやっています。
谷口  ちば先生も細かいところに遊びの要素をよく入れていましたよ。たとえば『キャプテン』の時、青葉学院との最初の試合。9回にイガラシがホームに突っ込んでアウトになる場面で、涙を少しだけキランとさせたり、本人も楽しみながら描いていましたね。


−一番こだわった、印象深いシーンというとどこでしょう?
出崎  最初の方ですが、サッカー部のキャプテン・相木が谷口に、野球こそやるべきなんだっていうことを気づかせる場面ですね。自分でも気づかないような大事なことを、まわりが気づいてあげるっていう。
谷口  コミュニケーションの大切さが一番よく出ているシーンですよね。
出崎  兄弟とか親子とかでも、本来はそうあるべきだと思いますね。特に今の世の中に欠けている部分だと思うので、少しでも伝えようと、原作に負けないぐらいかなり作り込みました。
谷口  ちば先生が少年時代に住んでた下町は、そういった関係が密でしたよね。
出崎  そうですね。生のコミュニケーションっていうのかな。日本的なつながりとか、下町の情緒性とか。そのころの下町で印象に残っているのは、子供たちの生きる強さですね。平気で他人のうちに上がり込んで、しかも夕食まで頂いてしまうっていう(笑)。そういうしたたかさというか、おおっぴらな関係に新鮮な驚きを感じました。アニメにした時も、下町の風情を壊さないよう神経を使いましたよ。
谷口  ちば先生の原風景なんだと思いますよ。それが全作品に通じてにじみ出ています。


―アニメ化の際に苦労されたのはどういったことでしょう?
出崎  一番困ったのは目線。特にあの「チロッ」っていうのには苦労しましたね。結構大事なことも「チロッ」で表現しちゃうんだもん(笑)。
谷口  セリフを極力おさえて、表情で心理模写を見せていましたから。特に目線っていうことには、すごく気をつかう人でしたね。
出崎  あの目線のレベルでアニメを見せるのは大変。こっちはセリフで補うほかはありませんからね。とにかく表現のレベルが高いというか、ストーリーに頼らない見せ方なんですよね。


―最後に『プレイボール』の読者、視聴者にメッセージをお願いします。
出崎  ボクは生きてくうえで一番大切なのは、人と人とのコミュニケーションだと思っています。それがないがしろにされている世の中で、『プレイボール』という作品が持つメッセージを、今こそ見直さなきゃいけないんじゃないでしょうか。この作品を見て、若い視聴者にも何かを感じて欲しいですね。それと僕は近藤が大好きなんですが、アニメ『キャプテン』はイガラシ編の途中で終わってしまってるんですよ。なので続きの近藤編もぜひ作りたいですね。実現できるかどうかはファンの方々の応援しだいですけど(笑)。


出崎哲プロフィール
『キャプテン』『うる星やつら完結編』『ハッピーバースデー』など数多くの名作アニメの制作、脚本、監督を手がける。1977年にアニメーション制作会社「マジックバス」を設立。現在、アニメ版『プレイボール』の総監督を務める。

 あぁ〜もうすぐ特盛『プレイボール』も終わってしまう〜。後半になってアニメからのスペシャル記事が出てきましたが、もっと早くからやって欲しかったなぁ〜。特盛終わって欲しくないよう〜(; ;)(Oz)
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