ノンにおまかせ

　好きなものはやめられない。ノンちゃんは事件物や探偵物のテレビを見るのが大好きである。ここまでならどこにでもいる女の子とかわらない。ノンちゃんはテレビだけでなく、身のまわりに事件くさいものを見つけだしては探偵のような行動に移るのだ。ある日、黒のサングラスに帽子をまぶかにかぶったあやしい男を見つける。男は銀行のようすをうかがっているようだ。もうジッとしていられない。早速変装して後を追う。ところがノンちゃんが銀行強盗だと思ったあやしい男は、自分は刑事で、銀行強盗は、銀行の前で工事している男たちだという。″そうか。地下を掘って金庫の所まで穴を掘るのだな。″早合点したノンちゃん。刑事を名乗る男と力を合わせて強盗たちをやっつける。これで警視総監賞ものだ…と、よろこんだが、実は、じつはである。刑事を名乗っていたのは、ニセ刑事で、工事の人たちが刑事だったのだ。

「なかよし」(講談社)1970年(昭和45年)6月号掲載