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ひとつの白球をおって、打ち、走り、捕り、投げる。『キャプテン』を読んでいると、そうした青春を野球にかけた少年たちの魂が伝わってきて、なぜか、少年のようにキューンと胸がしめつけられるような気持ちになる。野球だけではない。何かに一所懸命うちこんでいる姿は、実にすがすがしく、美しいものだ。
私の青春時代は文字どおり、音楽に明け、音楽に暮れるという毎日であった。早いもので、グループ(森田公一とトップギャラン)を結成してから、もう九年になる。当時、GSブームが下火になり、グループサウンズが次つぎと解散していくなかで、どうしても演奏を続けていきたいという仲間が集まってできたグループで、故意か偶然か、メンバーが各GSのバンドリーダーばかりだったことから、「トップギャラン」というカッコいい名前をつけ、わいわい、がやがやと今日まで続いてきた。
ひと口に十年といっても、いろいろな人間が集まってきているのだ。その間、、無事平穏に過ぎたわけではない。意見の違いから、もう明日からやめてしまおう、解散してしまおうと思ったことがなん度あったことか。でも、音楽に対する情熱は捨てられるはずもなく、結局、「自分たちにはこれしかないんだ」と、一種のひらき直りの精神でここまできてしまったのだ。
人の上に立つ人物は、人一倍、人を愛する心、情熱、そして根性をもちあわせていなければならない。そうでなければ、ひとたびピンチに陥った時、、チームを引っぱっていくこともできないし、みんなもついてこない。その点『キャプテン』に登場してくる谷口、丸井、イガラシはそれぞれキャラクターはことなるが、野球に対する姿勢は真剣そのもので申し分のないキャプテンといえる。墨谷二中が強力チームになったのも当然といえば当然だろう。