キャプテン 巨人軍 王 貞治さん
ジャンプ・コミックス

チームが苦しいとき頑張るのがキャプテンだ

巨人軍 王 貞治
コミックス『キャプテン』第16巻

 『キャプテン』は、ぼくから見ると理想的な野球チームを描いているように思う。
 苦しいとき、あせっているとき、また絶望しようとしたとき、そこで足を踏んばってチームを支えるキャプテン。そして歯を食いしばってついていくナインの姿。これは、少年野球でもプロ野球でも必要なことだ。
 ぼくは本所中学、早稲田実業、またジャイアンツでもキャプテンをつとめた。この間に感じたことは、
 「キャプテンがその真価を発揮するのは、チームが苦しいときだけだ」
ということだ。
 練習計画とか方針は監督が決める。チームはその線にそってやっていく。ところが、練習が辛い。あるいはゲームに負ける。「オレに野球をやれる力があるのだろうか」とか「こんなチームで勝てるのか」「他のチームに比べてうちは弱いのではないのか」という気持ちがナインの中に生まれる。
 そういうとき、キャプテンが陣頭に立ってやりぬく。どんなに苦しくても笑ってたえぬき、チームに希望の灯をともす。
 チームの状態がよければ、キャプテンはなにもしなくていいのだ。
 今のぼくにもスランプがある。なかなかホームランが出ない。それでもチームが勝っているときはいいが、ぼくが打てないために負けたときは本当に辛い。だからといって、ぼくは絶望したこともないし、暗い気持ちを表面に出したこともない。ただ、自分のふがいなさに怒りをぶつけ、それを練習で発散させてやってきた。
 よく聞かれる。「ブリーデンがあんなに打っているけど、タイトルへの自身はどうですか」そうしたとき、いつもぼくは「人は人、ぼくが力一杯やってとれなければ、それはしかたないことでしょう」と答えてきた。
 「いつも力一杯」ということは、『キャプテン』も同じことだと思う。
 なんの苦しみもなく勝つということは勝負の世界にはありえない。3割打者には7割の失敗があり、その失敗に打ち勝とうとするところにはじめて3割何分がある。
 勝って泣き、負けて泣く。その涙のとうとさを『キャプテン』は教えてくれている。その意味で、読むたびにさわやかな気持ちがするし、親しみを覚える。第一、このチームの中学が東京の下町で、名前もぼくの卒業した本所中学のある墨田区に似ているからね。


 ぼくたち漫画家が主になって行う野球大会で、昨年春秋優勝を果たしましたが、今年の春もまた優勝!! たいへんな偉業だと思っています。というのも、参加11チームの中では、平均年齢38とズバ抜けて高く、一日で四試合というハードなスケジュールだったからです。
 ちなみに、ぼくはチーム内で若いほうから三番目、ホームランも打ったし、スクイズも成功させたよ!(ちばあきお)
 現在ダイエーホークス監督の王貞治さん(当時は現役)です。つくづく感じるのはその道をきわめた人が書く文はうまいなあ…(Oz)
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