キャプテン38年ぶり
復活秘話
「父が亡くなって三十年以上たちます。父の漫画が風化しないよう、出来る事はないかと考え、たくさんの人に相談するうちに、夢のような結果になりました」
何度もアニメ化や映画化された、昭和の大ヒット野球漫画「キャプテン」が『グラウンドジャンプ』(集英社)の四月五日発売号から、三十八年ぶりに連載再開する事が決まった。感無量の表情で冒頭のように語るのは、作者・ちばあきお氏の長男で、「ちばあきおプロダクション」の代表取締役を務める千葉一郎氏(41)だ。
「キャプテン」は一九七二年から『別冊少年ジャンプ』で連載された。東京下町にある墨屋二中を舞台に、「谷口」「丸井」「イガラシ」「近藤」という歴代四人の野球部のキャプテンの奮闘ぶりを描いた。
あきお氏は、ほぼ同時並行で、『週刊少年ジャンプ』に谷口の墨谷高校時代を描いた「プレイボール」も連載。丸井とイガラシも墨谷高に入学し、三代のキャプテンがそろい踏みしていよいよ甲子園を目指すというところで、連載は終了してしまった。
「特別な才能がなくても、"諦めないこと"や"努力"で勝利を目指すという内容が多くの野球少年や読者の共感を呼びました。イチロー選手はイガラシに憧れていたことを公言しています」(漫画編集者)
一郎氏が言う。
「昨年夏に父の友人だった漫画家の本宮ひろ志先生に『何かできないでしょうか』と相談したところ、集英社の編集者をご紹介いただきました。最初は連載再開なんて大それたことは考えておらず、『一話読み切りで』と思っていました」
『グランドジャンプ』の増澤吉和副編集長が振り返る。「どうなるか全く分からないけど面白そうだ、というのが第一感でした。谷口くんが十年後に監督になっているのはどうかとか、かつての登場人物をあえて出さない形のストーリーとか、あれこれ考えましたね」
最大の問題は「誰に描いてもらうか」ということだった。増澤氏が悩んだ末に執筆を依頼したのは、現代のリアルな野球界を舞台にしたヒット作「グラゼニ」(講談社)の原作者でもある漫画家のコージィ城倉氏(53)だった。
城倉氏は、「思い入れがある作品ですし、唐突なお話だったので正直迷いました」と心境を明かす。
「小学生の時、クラスは『ドカベン派』と『キャプテン派』に分かれていた。僕は最初はドカベン派(笑)。でもある時『キャプテン』のワンカットを見て、あまりにシンプルな線に驚いて一気に好きになりました。
線だけでなくストーリーも非常にシンプル。複雑な伏線を張り巡らせる訳じゃないし、魔球も出てこない。でも、何とも言えない様式美がある。作品の"根っこ"にあるものを再現するなら僕しかいないという自負はありました。それで、読み切りではなく連載ということで引き受けたのです」
新連載では「プレイボール」のラストから新たなストーリーが始まる。
球春到来の四月、懐かしい彼らが再びグラウンドに帰って来る。週刊文春三月二日号