キャプテン 21世紀に残す名作マンガ

21世紀に残す名作マンガ

BEST100!

日本漫画遺産振興委員会・G.B.編

キャプテン
プレイボール
BEST 100


11位 キャプテン
ひたむきな野球
少年たちの成長ドラマ

"勝利"すらかすむ
圧倒的"努力"のマンガ

 荒川沿いのゴミゴミした下町の中にあるごくごく平凡な中学校"墨谷二中"。 その墨谷二中野球部のひたむきな姿を,歴代キャプテンを軸にして描く物語。 いや,このマンガくらい"ひたむき"という言葉の似合う作品はない。 最初っから最後までひたむき一直線なのである。
 掲載されていた雑誌が『別冊少年ジャンプ』といえど,ジャンプはジャンプ。 もちろんそのテーマは,あまりにも有名な"友情・努力・勝利"なワケだが,「キャプテン」に関していうならば, そのひたむきさのオンパレードぶりに"友情・努力・勝利"の中の,一番派手な部分"勝利"があまりにもかすむ。
 全国大会で優勝するという,"勝利の中の勝利"を手にすることもあったにもかかわらず, その場面では圧倒的な感動を読者は受けるにもかかわらず,全体的な読後感は"勝利"よりも"努力"に持っていかれてしまう。 いわば"友情・努力・勝利"というよりも,"友情・努力・また努力"といった 塩梅 あんばい だ。 それどころか"努力・努力・努力・努力・努力以下∞"といってもさしつかえない。 その余りにひたむきな努力の発端は,最初の主役である谷口が,墨谷二中に転校してくるところからはじまる。 全国屈指の中学野球の名門・青葉学院の2軍のそのまた補欠だった彼を, 墨谷二中野球部員はレギュラーだったと勘違いし,多大な期待を寄せてしまう。 その期待に応えるべく,彼の,しつこいようだが"ひたむき"な"努力"が開始される。
 大きく分けてこの「キャプテン」,4つの章に分けられる。 初代のキャプテン"谷口編"。2代目"丸井編"。3代目"イガラシ編"。そして4代目"近藤編"。

華のないキャラが
努力の末に花開く

 その中で"谷口編"は,寡黙な努力の人,谷口自身の野球選手としての成長の物語である。
 このマンガの全キャラクターにいえることだが,登場人物の誰もがあまりにも地味なルックスをしている。 主役の谷口にしてからが,華とかスター性とはまるで無縁の,一昔前の田舎の子どものようである。 そんなマンガの世界でいえばカッコよさとはほど遠い少年が,努力ひとつで名選手へと変容していく。 その過程は,ルックスに華がないのを忘れてしまうくらいに魅せるものがあり,なにより日本人の琴線に触れる。
 "丸井編"の主役となる丸井は,寡黙な谷口から一転した短気でおっちょこちょい,自分勝手ですらあるキャプテンだ。 そんな不完全な丸井が,野球選手というよりも,"人間として"どう成長していくか?が,この章のテーマとなってくる。
 "イガラシ編"のイガラシは野球選手としても,そしてキャプテンとしての人格も,キャプテン就任時点ですでに完成されている。 そんな天才と"野球部全体"の努力の物語がこの章だ。 いわゆる普通の野球マンガに,最も近い構成といっていいが,試合部分に割くページ数と同じような割合で登場する練習シーン。 これがなんといっても「キャプテン」の特徴である。
 そして,"近藤編"は丸井以上に人間的には不完全な近藤と野球部の,明日を見据えたチームワークのストーリーとなっていく。
 お気付きかもしれないが「キャプテン」の"努力"が生み出したものは"勝利"もあるが,それ以上に"成長"である。 そして恐ろしいことに,読んでいるこっちまで人間として生長した気にさせてくれる傑作なのである。


選者のコメント
●加藤昭彦(TVチャンピオン第6回少年マンガ王優勝)
小学生の頃,一番ハマった作品。最後まであきらめないことのすばらしさを描く。

●22歳男性(会社員)
野球を始めるきっかけ。

●24歳男性(学生)
ノック近すぎ。

●28歳男性(アルバイト)
チームをまとめていく,キャプテンの行動に感涙。あれだけ地味な努力を面白く見せたマンガはない!!

●51歳男性(会社員)
何回読んでも,胸が熱くなる。

●45歳男性(ライター)
日本人による日本人のためのマンガ。

●39歳男性(自営業)
地味さの中にキラリと光るものがある。


55位 プレイボール

障害をも克服する
努力の男の物語

 ちばあきおの名作「キャプテン」('72年『別冊少年ジャンプ』連載開始)の続編のような作品。 続編の"ような"というのは,「キャプテン」の初期の主人公・谷口の高校入学からスタートするマンガなのだが, この連載時点で「キャプテン」はいまだ連載継続中であり,接点は少ないがふたつの作品は同時期にリンクしているのだ。 同じ時期,舞台も近所,ただ視点が違うという,いわゆるザッピングといっていいかもしれない。 ともかく"努力"が前面に登場するノリは「キャプテン」同様だが,「プレイボール」には, 努力では回避不能と思われる"障害"が谷口につきまとう。 中学時代の連投から,指が曲がってしまい,ボールが投げられないのだ!! それを克服していく姿に感動しないヤツは,人間じゃないといっていいくらいの,絶対感動作品だ。


選者のコメント
●33歳男性(フリーター)
努力のマンガ。「キャプテン」とは主人公がかわるのも斬新。

●36歳男性(会社員)
スポ根とはひと味違う野球マンガのおもしろさがある。

カーツ佐藤
'63年,東京生まれ。大学浪人中より雑誌に原稿を書きはじめ,ダラダラと現在に至る。熱い少年漫画ファン。


BEST 100
順位 作品タイトル 作者 連載開始年
1 ドラえもん 藤子・F・不二雄 1970年
2 あしたのジョー 作:高森朝雄(梶原一騎)・画:ちばてつや 1968年
3 北斗の拳 作:武論尊・画:原哲夫 1983年
4 ブラック・ジャック 手塚治虫 1973年
5 AKIRA 大友克洋 1982年
6 ドラゴンボール 鳥山明 1984年
7 SLAM DUNK 井上雄彦 1991年
8 火の鳥 手塚治虫 1966年
9 タッチ あだち充 1981年
10 ゴルゴ13 さいとう・たかを 1968年
11 キャプテン ちばあきお 1972年
12 鉄腕アトム 手塚治虫 1952年
13 デビルマン 永井豪 1972年
14 忍者武芸帳 影丸伝 白戸三平 1959年
15 はじめの一歩 森川ジョージ 1989年
16 ドカベン 水島新司 1976年
17 リボンの騎士 手塚治虫 1963年
18 めぞん一刻 高橋留美子 1980年
19 キャンディ♡キャンディ 作:水木杏子・画:いがらしゆみこ 1975年
20 ポーの一族 萩尾望都 1972年
21 風の谷のナウシカ 宮崎駿 1982年
22 がんばれ元気 小山ゆう 1976年
23 巨人の星 作:梶原一騎・画:川崎のぼる 1966年
24 エースをねらえ! 山本鈴美香 1973年
25 ガラスの仮面 美内すずえ 1976年
26 ルパン三世 モンキー・パンチ 1967年
27 錦の国星 大島弓子 1978年
28 銀河鉄道999 松本零士 1977年
28 ベルサルク 三浦建太郎 1990年
30 Dr.スランプ 鳥山明 1980年
31 カムイ伝 白戸三平 1964年
32 キャプテン翼 高橋陽一 1981年
33 寄生獣 岩明均 1990年
34 ぼのぼの いがらしみきお 1986年
35 BANANA FISH 吉田秋生 1985年
36 サイボーグ009 石ノ森章太郎 1964年
37 ベルサイユのばら 池田理代子 1972年
38 日出処の天子 山岸凉子 1980年
39 リバーズ・エッジ 岡崎京子 1993年
40 童夢 大友克洋 1980年
41 ジョジョの奇妙な冒険 荒木飛呂彦 1987年
42 きりひと讃歌 手塚治虫 1970年
43 MONSTER 浦沢直樹 1996年
44 はいからさんが通る 大和和紀 1975年
45 三国志 横山光輝 1972年
46 コブラ 寺沢武一 1977年
47 ちびまる子ちゃん さくらももこ 1986年
48 キン肉マン ゆでたまご 1979年
49 ONE PIECE 尾田栄一郎 1997年
50 ロック冒険記 手塚治虫 1952年


 ネットで検索していたらこの本の存在に気がつきました。発売から12年も経っていました。中古屋さんで買いました。(^^;
この文はこの本からの抜粋ですが,この本の宣伝をしておかないと怒られるかもしれないので…,ベスト100と書きましたが実際にはベスト200まで順位が載っています。そしてここが大切なのですが,選んだ基準が"21世紀に残す意味と価値のある漫画を選ぶという基準"での結果なのです。本のタイトルも「残したい」じゃなく「残す」です。漫画に対する想いが伝わってきました。
 自分の感覚は間違ってなかった。やっぱり"あきおさん"はすごい人なんだ。 この本の中にはジャンル別のベスト10も載っています。野球漫画別のベスト20では『キャプテン』が第2位,プレイボールが第5位でした。(このかっこの中はとばして読んで欲しいのだけれど…「タッチ」に負けた…でも「タッチ」って野球漫画?恋愛漫画じゃないの?負けた悔しさを晴らす言葉だけど…なんか納得いかない…。)でももっともっと時代が進めば,きっと順位はもっと上がっていくと思っています。(Oz)
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