キャプテン 漫画家 永井豪さん

あきおさんの思い出は笑顔ばかり

漫画家 永井豪

 私は、二歳年上のちばあきおさんを「あきおチャン」と呼んでいた。
 あきおチャンの優しい笑顔、溢れんばかりの若々しさ、遊びやスポーツにぶつかっていく″少年″そのもののような純粋さが、年下である私に、「あきおチャン」と呼ばせてしまったのだろう。
 初めてあったのは、私が『ハレンチ学園』を書き終えた頃、出版社のパーティーでだったと思う。会ってすぐに好きになり、いきなり話が弾んだ。あきおチャンには、人をリラックスさせる何かがあった。
 何度かゴルフを一緒にやった。体は私より小さいのに、あきおチャンの筋力はしなやかでパワーがあり、球を思いっきり飛ばす。付いて行くだけで精一杯という下手な私を嫌がりもせず、いつも楽しく遊んでくれた。
 グアム島でゴルフをやった時のことだ。車の免許を持っていない私に、「ゴルフのカートはスピードが出ないから、運転の練習をするといいよ」と勧めてくれた。私は大喜びで運転席に座った。果たして、人一倍運動神経の鈍い私は、アクセルとブレーキを踏み違え、カートをヤシの木に正面衝突させてしまい、あきおチャンは助手席から転がり落ちた。私が悪いのに、あきおチャンは「ボクの責任だョ〜」と言ったのだ。そんな人だった。人には優しく自分に厳しい。
 深夜まで一緒に酒を飲んだ。マンガについて語り合っていたのだが、あきおチャンは最後にこう聞いてきた。「豪ちゃんはマンガ描くのが好きなんだね?」。私は「エッ?」と驚いた。私は、マンガ家というものは皆、マンガを描くのが好きだと信じ込んでいたので、「嫌いなの?」と聞き返した。「そりァ〜そうだよ、マンガ描くのってツライばかりだよ」あきおチャンは、笑って答えた。
 マンガ描くのが楽しくてしょーがない私には、あきおチャンの「ツライ」という気持ちが理解できなかった。今にして思えば、あの時もっと、あきおチャンの心の中にあるものについて、聞くべきだったのではと悔やんでいる。
 あきおチャン、また一緒に遊びたいぜ!

(「ちばあきおのすべて」回想ちばあきおより)

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