キャプテン 漫画家 本宮ひろ志さん

ちばあきおの漫画は本物である

漫画家 本宮ひろ志

 少年ジャンプの連載漫画で、ちばあきおさんの作品によく似た野球マンガがかなりの人気だったと聞いた。編集者に、たまにはそういう若い人の作品を読めと云われた。
「ふざけた事を云うな。俺はちばあきおの作品に感動した人間だ。本物を知っている人間がその亜流を認められるわけないだろう」
 ちばあきおの作品群は今でもまぎれもない本物中の本物である。
 最近、テレビを見ていると、よくもこれだけのバカが出てくるもんだと腹が立つ。どのチャンネルをひねってもバカタレントが出て来て騒いでいる。マンガもそうだ。描き手も読み手もバカが増えた。百人のマンガ家がいたら、作家性をしっかりそなえた描き手は十人だろう、残り九十人はバカだ。そのバカマンガ家が九十万人のバカ読者を作ってしまった。バカマンガ家になれているバカ読者よ、ちばあきおのマンガを全巻読んでみるがいい。そしてそこから得られる感動、人間の持つ豊かさ、あたたかさを身にしみて感じるがいい。
 生活の豊かさは、人間を図に乗せる。
 哲学にひたる事もしなくなり、謙虚な研究心も失い、死や病気、貧しさという現実から目を背ける。豊か故に関係ないと思い込みたいのだ。豊が悪いのではない。豊かさで自分をごまかしてはならないのだ。バカバカしい事に気を紛らわし、物事を真剣に見つめようとしない事は最悪だ。自分たちの欲望のみを推し進めた結果の破滅が待っている事を感づきながらも今日の欲望に負けている。
 ちばあきおのマンガは本物である。
 人間の感性と知性、人間のすばらしさを教えてくれる。マンガとは楽しくだれでも読める簡単な読み物だ。読者よ、そんな簡単な読み物さえ判別出来ないのか。本物を見る目を養え。バカマンガなぞを読み流すな。
 ちばあきおのマンガを読んで何が本物であるか、何が素晴らしい事かを学んだら、クソマンガなんかもう読むな。そして本物以外は捨ててしまえ。時間のムダだから。

(「ちばあきおのすべて」回想ちばあきおより)

 この白黒がはっきりした文は本宮さんの特徴です。本宮さんの文はダイレクトに気持ちが伝わってくるので、読んでいくとその迫力にビックリするときがあります。そう思いませんか?(Oz)
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