漫画家 政岡としや
あきおちゃんとは、本当に古いつき合いだった。私と梅本さちおさん、それにあきおちゃんの三人でてつや先生のアシスタントをやっていて、この三人は何かと気の合う仲間だった。当時は、てつや先生に″三馬鹿トリオ″などと呼ばれていたものだった。
昨年の春頃、久し振りにあきおちゃんが私の夢の中に、現れた。夢の中のあおちゃんは「マー坊、ぼちぼち来いや」と言った。私は「まだまだ行かへんよ」とこたえたが、あきおちゃんは「梅ちゃんはもうすぐ来るよ」と言った。それから半年後に梅本さんが亡くなられた。あきおちゃんと同じ9月だった。三馬鹿の中で、私一人が残される形となった。
そういえば、あきおちゃんが亡くなる前日にも不思議なことがあった。何げなくタンスを開けると、香典を包む袱紗が散らかっており、気になって整理したのだが、その翌日にあきおちゃんが亡くなったという連絡が入り、びっくりしてしまった。ショックだった。それ以降、あきおちゃんは、私の夢の中に現れるようになった。私だけでなく、会った人みんなが、あきおちゃんは心のきれいな人だと言っていた。亡くなってから、あらためてそう思う。普段は、ものすごく陽気だが、時にさびしげな様子を見せることもあった。でも、それを他人に感じさせないようにしていた。とても繊細な人だったのだと思う。
あきおちゃんと出会い、そして青春時代をともに過ごせたことは、私にとって幸せなことであった。スポーツは何でも好きだったが、音楽も大好きで、聴くだけでなく自分でもよくギターを弾いていた。仕事が一段落したあと、窓辺でよく弾いていたが、その音が今でもふっと聞こえてくることがある。たいていさびしい曲で、それがあきおちゃんには似合っていた。あきおちゃんは、夢の中で「マー坊、ぼちぼち来いや」と言ったが、今度は梅本さんと二人で私を誘いに来るかもしれない。おそらく二人とも、若い時の姿のままだろう。一人残された私としては、ただただかなしいだけである。
(「ちばあきおのすべて」回想ちばあきおより)