キャプテン

王貞治VSちばあきお


対談記念写真
ちば  王さん、756号おめでとうございます。テレビでみていたんですが、とびあがってしまいました。
 ありがとうございます。おかげさまで打てました。
ちば  打ったあとバンザイをしてしまいましたが、王さんはホームランを打っても、いつもは、うれしさをあまり、表にだしませんね。
 そうなんです。うちの監督は、現役時代一発がでると、体中に喜びをみせていましたが、ぼくはどうもやれないんです。クニさん(国松コーチ)なんか、いつもいうんですよ。お客さんが喜んでくれているんだから、それにこたえるゼスチャアをしろってネ…。 ぼくって、もともと演技派じゃないんです。
ちば  もっとゆっくり走れば、いいと思うんですが…。けれど、いかにも王さんらしくていいですよ。
 むりして作ってやれば、おかしいんじゃないですか。でも、756号のときは、日本中のファン、それにうちのナインが期待してくれていて、ぼくも一日も早く打ちたいと思っていました。それが打てたから、ほんとうにうれしかったですね。
ちば  五、六月ごろ、スランプで打てなかったとき、ことしは新記録はむりじゃないかといった声もありましたが、王さん自身は、どうだったんですか。
 練習すれば、かならずスランプから抜けられる。そうなれば、やれると思っていました。
ちば ぼくも、漫画家でつくっているホワイターズというチームで、やっているんです。
 ポジションはどこですか。
ちば センターです。後楽園でも、やったことがあるんです。
 ぼくも、昨シーズン中、ちょっとライトを守ったんですが、外野って、まわりにだれもいなくて、孤独なポジションですねえ。
ちば 王さんにバッティングを教えていただこうと思っているんです。
 バッティングは人によってみんなちがうから、こうして打てということはないんですよ。けれど、これだけはいえます。 まず、ボールをよくみること。ただみるだけじゃなくて、全身の神経をボールに集中するんです。
ちば だから王さんのバッターボックスに立ったときの目は、きびしいんですね。
 それと打つまえから力をいれてはいけない。力のはいるのはバットがボールに当たる瞬間だけです。 ぼくのスイングが、ほかの人よりゆっくりしているようにみえるのは、そのためなんですよ。
ちば それはいいことを、聞きました。一本足のときのコツというのはあるんですか。
 足をあげるとき、ももからひざの内側の筋肉を、しめあげるのです。
ちば 練習と言えば『キャプテン』も、いつも練習しています。こんなに練習したら、試合ができなくなるんじゃないか、というくらいやるんです。
 知っています。いつも愛読させてもらってますから。
ちば ほんとうですか。
 初代キャプテンの谷口くんは、週刊誌の『プレイボール』にいったんですよね。そしてあのチビのイガラシくん、なかなかやりますね。
ちば 王さんにいわれて、イガラシも、喜んでいるでしょう。こんどから、キャプテンは、イガラシにかわって、この近藤なんです。
 ああ、あわてんぼうの近藤くんね。でも、だいじょうぶかなァ。この近藤くん、キャプテンの重責をはたせるかなァ、心配だなァ。
ちば ぼくも心配なんですよ。
 ところで墨谷二中というのは、東京の下町にあるんでしょう。ぼくも下町育ちですから、親しみがあるんですよ。ちばさんも下町育ちだそうですね。
ちば そうです。だから王さんが中学のとき、試合をした墨田公園の艇庫グランドで、ぼくもやりました。
 ああ、あそこでやりましたね。なつかしいですよ。ぼくの子どものときは、野球、野球の毎日でしたからね。
ちば 漫画は読まれましたか。
 もちろん、読みましたよ。付録のいっぱいついた月刊少年誌でしたけどね。
ちば 王さん、ことしは800号といわず、ホームラン記録をどんどん伸ばしてください。そして日本シリーズで勝つように祈っています。
 ちばさんも、『キャプテン』をますますおもしろくしてください。
あきお先生が描いた王選手
「1978年1月号月刊少年ジャンプ新春特別企画より」(昭和53年1月1日発行)

 この対談は1978年の月刊少年ジャンプ新年特大号に新春特別企画ビッグ対談として載ったものです。古本屋で見つけてきました。ちなみに定価280円が500円で売っていました。(^^) (Oz)
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