キャプテン 漫画家 本宮ひろ志さん
ジャンプ・コミックス

あんな にくたらしい男はいない…!!

漫画家 本宮ひろ志
コミックス『プレイボール』第1巻

 もう七年ほど前になるが、ぼくは失恋したことがある。そんなある日、夜遅くちばあきおさんから電話があった。かなり酔っているようすだった。そして「おれもよう、経験あんだよ。そんなときまいっちゃってなあ。でも、そんなことでクヨクヨしねえで、ガンバレヨ!」レロレロに舌をもつれさせながら、なぐさめてくれたのである。
 ぼくは″ああ、やさしい人なんだなあ″と思っていた。しかし、その横に、ぼくにとっても、あきおさんにとっても、共通の悪たれ友だちがいたらしい。あきおさんも、かれらから本宮めが失恋したらしいと聞き「それじゃあ、おれも経験者だから、なぐさめてやる」そういって、電話をくれたのである。
 その後、みんなから「おまえは、本宮が失恋して悲しんでいるのに、ワリイヤ」とはやしたらしいのだ。よく日、あきおさんから「夕べは酔っぱらって、ひどいことをいったそうで、なんとも申しわけない」と電話があった。
 ぼくは、なにをあやまっているのか、ぜんぜんわからなかった。あきおさんのなぐさめの電話を、うれしく思っていたぼくは、かえって恐縮した。実に心のやさしい人物だ。このときが、ちばあきおさんとの精神のはいった接触の最初であった。
 それ以前、ちばあきおは、わが野球チームの、にくたらしい敵だ。ランナーが出ると、かならず打ちやがる、にくたらしい強いバッターだった。現在は、もっとにくたらしい。ゴルフでは、ボロクソにやられっぱなし。どんなプレッシャー(圧迫)がかかろうと、一歩もさがらず、自分のペースをくずさず、結局、最後にぼくは、メタメタにやられている。
 あんなにくたらしい男はいない。かれの勝つため、山ごもりしてまで、ゴルフにうちこんだときもあった。こんどこそ、勝てると思って挑戦した。でも、勝てないのだ。
 「なに!?ちばあきおの漫画。そんなものは、皆さんがこうして買って読むんだもの、おもしろいにきまってるじゃないですか」
 ホント、にくたらしい!!


 この「プレイボール」に登場する、主人公の谷口くんは、すでに「キャプテン」で中学時代をかいています。
 舞台を高校に移し、ふたたび谷口くんを世に送りだすことを、ひじょうにうれしく思っています。
 一歩、おとなに近づいた高校という場で、谷口くんが、これからどう成長していくか、みなさん、あたたかく見守ってください。(ちばあきお)
 この「プレイボール」ではコミックスカバーのそで折り込みに掲載されたちばあきおさんのコメントはこの第1巻しかありません。(Oz)
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