キャプテン NHKアナウンサー 土門正夫さん
ジャンプ・コミックス

悲しさすら感じる高校野球の魅力とは?

NHKアナウンサー 土門正夫
コミックス『プレイボール』第10巻

 サ――ッとあがる砂煙り、その中で真っ黒な顔がにっこり笑っている。勝利の瞬間の感激はやがて、球場全体に汐騒のように広がっていく。
 こんな場面をテレビでご覧になったことはありませんか。今やテレビのスポーツ中継に″高校野球″は欠かすことのできない存在となってきました。一パーセントを競い合う視聴率の中で50パーセントに近い数字を出して、アッといわせるのです。
 でも、スターもいない、技術も低い高校野球が、なぜ、こうまで人びとの関心を集め、絶対の人気を得ているのでしょうか。
 実のところ、本当の意味は私にもわかりません。ただ、ここにある墨谷高校ナインのように、ひとつの目的に向かってひたむきに努力する真摯な姿が、見る人に大きな感動を呼び起こすことに間違いはありません。そこにあるなんの邪心もない、純粋な気持ちにひかれるからに違いありません。
 放送席に座っていても、グッとこみあげてくる感動に絶句し、なん度、必死に涙をこらえたかわかりません。アナウンサーは放送が始まると、割り合いクールになれる人種で、めったなことでは涙などこぼさない人間が多いのです。にもかかわらず、ズルズルとひき込まれてゆく高校野球の魔力には、喜びよりむしろ悲しさすら感じてくるのです。
 隣に立って、さりげない顔をしている解説者の目に、ウッスラと涙を見たことも一度や二度ではありません。
 半世紀をこえる高校野球の歴史は、ひとりひとりの若者たちが作りあげたものです。少年たちはそこに自分の将来を見、高校生はそこに自分を置きかえ、過ぎたる者はそこに青春の回想を巡らすのでしょう。さわやかな笑顔と流れる汗、感動の涙、高校野球は、さらに不滅の歴史を描きつづけるでしょう。

 最後に、谷口主将以下、墨谷高校ナインにも、感動の日が訪れることを祈って……。


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