キャプテン フォークシンガー 及川恒平さん
ジャンプ・コミックス

愛すべき墨高野球部

フォークシンガー 及川恒平
コミックス『プレイボール』第11巻

 故郷を離れて生活するようになって、高校野球はみんなテレビの中での出来事になり、それに応えるようにゲームの方も年ねんはなやかに、つまり金がかかっているな、という雰囲気がありありで、たまにそうじゃない感じの代表校が出てくると、夢中で応援するこの頃です。
 金をかければいいってもんじゃない、とはいうものの、ばく大な費用のかかるのが当然で、かければかけるほど甲子園が近くなるのも想像がつくというものです。
 墨谷高校野球部が、どれくらいの予算をもらっているのかは知らないけれど、あの様子じゃきっと、東海大学付属高校あたりに比べたら、コンパの費用にもならないくらいでしょう。だけど、私の通っていた北海道の高校も、その実力を棚にあげれば、墨谷高校野球部とよく似ていました。そしてまた、多くの無名の高校野球部もきっとそうじゃないかと思います。
 ひとつのグランドに野球部をはじめ、サッカー部、ラクビー部、陸上部などがひしめきあい、協力しあい、ケンカしあいながら練習しているのが現実でしょう。
 『プレイボール』を読んでいる私の時間は、そのスリリングな展開とは別に、頁と頁との間に自分の高校時代を思い浮かべる時間でもあるのです。
 多くの野球漫画が読者のイマジネーションを無視し、なかば暴力的にその世界にひきずり込もうとしていて(漫画好きの私はそれはそれで楽しんだりもするのだけれど)、それらの漫画とは正反対のちばあきお氏の作品が、やっぱりといった感じで、一番好きです。
フォークシンガー 及川恒平さん  もしかしたら私は、墨谷高校が甲子園に出場することをあまり望んでいない、数少ないファンのひとりかもしれません。
 野球の魅力にとりつかれ、青春を白球に賭けている谷口君たちの姿に感動しながらも、野球がほかのスポーツに比べて、あまりにも特殊化してしまったことで、傷つかないでほしいと願わずにはいられないのです。
 まさに、今の墨谷高校野球部は、野球を愛する人たちの理想の姿であるからです。


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