フーちゃんは、九人兄弟の一番上である。気のいい両親と住んでいる。みんなからはフーにいちゃんとよばれている。へ理屈言うのが好きである。好きというより、ひと理屈こねないと落ちつかないのである。
例えばこうである。″外見で女の子を追いかけるなんて″と友だちにへ理屈をいうが本人は、人のいない所で、その女の子のとなりに座ったりする。
″年賀状なんてつまらない因習だ″なんていいながら、自分に一枚もこないと、自分あての年賀状を書いたりする。
九人兄弟という子だくさんの一番上で気をつかっているフーにいちゃんの立場に立って、家族の中の何気ないエピソードに、さまざまな仕掛けをして、人間のもっているこだわりを鋭く描いて読ませてくれる。
「産経新聞」日曜版1970年(昭和45年)11月29日号から1971年(昭和46年)2月14日号に掲載(全12回)
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