えー、あるところに、いやー、ある家にとってもそそっかしい息子がおりましてな。朝から晩までヘマばっかり。例えばあ〜た、朝、歯をみがいて顔を洗うだけでも、コップは割るわ、手拭いかけは壊すわ、顔を洗い終わって部屋に入ろうとすると障子を破る! てなぐあいでな、買い代えていたんじゃー家の経済がもたない。そこでおふくろさん、息子がヘマをやると、すぐ直しなさーい! とどなる。息子は、こんな性格に産んだ親が悪いんだ! とはいいませんが、″直しゃーいいんだろー、直しますよー″ってんで、いろ紙をちょっきんちょっきんちょっきんなっと、丸く切ってぺたぺたはっていく。それを見た親父さん、よせばいいのに、″イキな感じじゃねえか、ちょっとしたセンスだ″なんてほめるもんだから、息子は怒られると思ったのをほめられたんで、電気の傘も、障子も、壁も、コップも…エトセトラ。よく見ると部屋じゅう同じ模様だらけ。夫婦顔を見あわせて、″こりゃーちょっといきすぎだ″。さすが落語大好きだった作者の作品である。