ちばあきおは、少女漫画雑誌の編集者から声をかけられたこともあって、少女漫画からスタートする。大きな邸宅に堀をのり越えて入った時は、少年の好奇心で邸内の散歩かと思えた。その家のチビのお嬢さんにみつかり、ボールさがしだと言い訳をしながら、ことばづかいがていねいになった時は、このお嬢さんに会いたくて忍び込んだのかと思えた。それが泥棒の手先につかわれているとわかって、″えっ″とびっくりさせられる。読者に疑問をあたえながらのストーリー運びは処女作とは思えないほど巧み。サブとチビのお嬢さんの描写の中に、これ以降の作品の根底であり、ちばあきおの執筆姿勢でもある。純真な子ども心、人を傷つけない思いやり、善意、心くばり、などを見ることができる。この作品は、サブの過去の生活にふれていない。兄きに捨てられたと思えるサブは、これからどうするのか。ちばあきおは読者に参加してもらい、考えさせることが好きなようだ。「なかよし」(講談社)1967年(昭和42年)12月号掲載
ちばさんのデビューの頃は知らない。彼の自伝漫画によると兄・ちばてつや氏のアシスタントをしている頃(当時てつや氏は少女漫画をかいていた)、担当編集者にすすめられ、少女漫画をかいたことが描かれているが、それがこの『サブとチビ』(講談社「なかよし」所載)のようだ。昭和42年のことで、ぼくはまだ出版社に入っていない。当時の担当編集者にその頃のことを聞いてもらったところ、二か月でかきあげたということだが自伝漫画によると、一年ほどかかっている。初めての漫画で、準備に時間がかかったようだ。ただし雑誌掲載は、生田直親氏原作の連載漫画『リカちゃん』(講談社『少女フレンド』所載)の方が早かった。この辺のくわしい事情はわからない。
(元「月刊少年ジャンプ」編集部 谷口忠男)
| 発 行 日 | 作 品 タ イ ト ル | 発行社 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1979年 8月15日 | 『校舎うらのイレブン』 | 創美社 | JSC |
| 1984年11月 9日 | ちばあきお傑作集『校舎うらのイレブン』 | 集英社 | JCDX |
| 1994年 9月24日 | 『ちばあきおのすべて――「キャプテン」から「チャンプ」までの軌跡』 | ホーム社 | JCS |
| 1995年 7月24日 | 『ちばあきお名作集 短編集3「気になるあの子」』 | ホーム社 | JCS |
| 2008年 6月30日 | 『校舎うらのイレブン』 | 朝日新聞出版 | 昭和の名作マンガ |