キャプテン

がんばらなくっちゃ

がんばらなくっちゃ  ちばあきおの自伝である。漫画家の兄・ちばてつやの作品を手伝っているうちに、漫画の世界にひきこまれ、気楽にひきうけた一作目が出来上がるまでの苦労話が中心。

 話が出来なくて、苦しんでいる時に、兄のてつやのセリフに″その人物の気持ちになるんだな″というのがある。ちばあきおは、この言葉をほんとうに大事にした。いろいろな作品に登場する人物たちの内面の模写や思いやりのある行動の中にその姿勢を見ることができる。

 メインキャラクターでない脇役の人々の表情やしぐさを見てほしい。実に生き生きと表情のこもった個性を持って描かれている。作者が人物一人ひとりに愛情を持っていなくては描けない。

 作者の作品から読者が受ける、あの等身大の共感や感動は、作者には執筆の時に登場人物の一人ひとりの声が聞こえていたのではないかと思わせる。

「別冊少年ジャンプ」(集英社)1973年(昭和48年)2月号掲載


あきお先生

『がんばらなくっちゃ』のこと

元「月刊少年ジャンプ」編集部 谷口忠男

 『月刊少年ジャンプ』(当時の誌名は『別冊少年ジャンプ』)に昭和47年(1972)の秋から約2年間『漫画家自伝シリーズ』というのを掲載していた。
 読切りしかかかなかったちばさんが、連載漫画『キャプテン』をスタートさせ、連載のリズムにも慣れてきた頃だと思う。シリーズ6番目のかき手として、おそるおそる依頼にいった。

「ウチで『漫画家自伝シリーズ』をやっているんだけど、知っているでしょ」
「そうだったっけ?」
「そうなんです!」
「それで…?」
「それで、今度ちばさんにかいてもらおうと思って…」
「とてもじゃないが、ムリだなァ…」
「そこをなんとか…。締切りギリギリまで待つからさあ」
「えっ、『キャプテン』はギリギリじゃないの?」
「いや、ムチャ、ギリギリですよ」
「じゃあ、ムリじゃない」
「そうか、そうね、ムリだよね、ムリしなくていいよ」

 会社に戻ったらちばさんから電話がきて、「やるよやるよ」。
 そうしてできたのが、自伝『がんばらなくっちゃ』なのです。
収録コミックス
発 行 日作 品 タ イ ト ル発行社備考
1979年 8月15日 『校舎うらのイレブン』 創美社 JSC
1984年11月 9日 ちばあきお傑作集『校舎うらのイレブン』 集英社 JCDX
1994年 9月24日 『ちばあきおのすべて――「キャプテン」から「チャンプ」までの軌跡』 ホーム社 JCS
1995年 4月24日 『ちばあきお名作集 ふしぎトーボくん5 超能力はおじゃま虫!?』 ホーム社 JCS
2008年 6月30日 『校舎うらのイレブン』 朝日新聞出版 昭和の名作マンガ
2009年10月 7日『キャプテン完全版②』 集英社 キャプテン完全版

 キャプテンを描いている時期の漫画自伝です。この作品はかなり笑えます。(^^)
 なおこの紹介文を書いた編集者の名前に注目して下さい。この人の名前が『キャプテン』、『プレイボール』で活躍した谷口くんの元になった人です。
 なお備考のなかの記号は JCS:ジャンプ・コミックス・セレクション JSC:ジャンプ・スーパー・コミックス JCDX:ジャンプ・コミックス・デラックス の略です。(Oz)
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