この作品は、連載の『プレイボール』が終わって四年、『キャプテン』が終わって三年がたった久々の連載である。人気を博した得意の野球ものでもなく、絵のタッチも変えて新天地にチャレンジした読み切り連載の形をとった作品である。主人公の小学四年生のトーボくんは、犬、猫、ネズミ、鳥などと話ができるため動物とは仲良しだが、人とはなかなかなじめず、人間をさけている。素直に話ができるのはクツ屋をやっているとうちゃんだけ。
動物や鳥と会話ができたり、人の心もわかる（じゃんけんで負けたことがない）トーボくんは、他人から気味悪く思われ、友だちもできない。
そんなトーボくんが、犬、猫、同級生、宇宙人などとからみ合って話がつくられている。三つほど紹介しよう。「ふしぎな宇宙旅行」…トーボくんは、ＵＦＯに乗って、ある惑星の一つの島の上空にいる。この島は漁場として最高なので人間に似た生物が取り合い続々と上陸する。ところが島だと思っていたのは大きな魚の口の上で、パックリと魚のエサになってしまう。この話、神の立場的に視点を外界において、人の力の及ばない運命的なものを感じさせてくれる。「北国からきたネコ」…野生のネコが、トーボくんにエサをもらっている犬や猫にいう。″山野で生きにゃならんという実感もその必要もないやつにはわからん、ナマると生きられん。″エサをもらい環境にならされて本性を忘れている甘えをぐさりとつく。生物の掟のきびしさに虚をつかれる。「超能力はおじゃま虫!?」（最終回）…人や動物の心が読めるトーボくんの超能力は、″人間うそ発見器″″まるで神さまじゃん″といわれる。人間少しも表裏がなくやましさのない人間はいない。同級生だけでなく、動物たちまで、トーボの視野をさけ近づかなくなる。本当にこんな人間がいたら恐ろしい話である。トーボは、またある施設に入れられることとなる。
傷ついた心に薬を処方することが多い作者の作品としてはサメた目で見ている。ちばあきおを語るには、この異色作を読まずには語れない。
「月刊少年ジャンプ」(集英社)1982年(昭和57年)4月号から1983年(昭和58年)12月号に掲載
この作品は、連載の『プレイボール』が終わって四年、『キャプテン』が終わって三年がたった久々の連載である。人気を博した得意の野球ものでもなく、絵のタッチも変えて新天地にチャレンジした読み切り連載の形をとった作品である。主人公の小学四年生のトーボくんは、犬、猫、ネズミ、鳥などと話ができるため動物とは仲良しだが、人とはなかなかなじめず、人間をさけている。素直に話ができるのはクツ屋をやっているとうちゃんだけ。